後輩のハチヤ君と大学地下食堂から学舎への、帰りの坂道での話し。
私「お、あそこに彼岸花がさいてるよ・・・本格的に秋だねぇ・・・」
ハ「♪ あぁかぁい 花なぁらまんじゅうしゃぁげ~
オランダ屋敷に雨がふぅる~ ですねぇ
(『長崎物語』作詞:梅木三郎 作曲:佐々木俊一)・・・」
私「え?その歌 聞いたことはあるけど・・・確か戦前の歌だろ?何か関係あるの?」
ハ「のりもさんが今言った、彼岸花ですよ・・・
別名 まんじゅしゃげ 曼殊沙華って書くんですよ」
私「へぇぇ~~~ なんで?」
ハ「えへん。お教えしましょう。
曼殊沙華っていうのは、
サンスクリット語で『赤い花』とか『葉に先立って赤花を咲かせる』
っていう意味から来たっていわれてるんですよ」
私「ふぅンンン・・・なるほど・・・」
ハ「それでね。お釈迦様が法華経の奥義を弟子たちに説いていたときに、
天上から降ってきた花で、ありがたいものだっていわれてるんですよ」
私「へぇぇ~~~よくまぁ知ってるねぇ・・・」
ハ「大学の同期にお寺の息子がいるんですよ。
そいつの話しによるとね、
曼殊沙華ってお彼岸の頃咲くから彼岸花って言うんだってことと、
もうひとつ、この花の球根には毒があって、
昔はこの毒を抜いて食用にしたんですって。
だけどそのまま食べるとあの世に行っちゃうでしょ?
だからこの花をいちし(一死)の花って言ったんですって」
私「いっし?」
ハ「ええ・・・万葉歌でも
「路のべの 壱師の花の 灼然(いちしろ)く 人皆知りぬ我が恋妻は」
(柿本人麻呂11・2480)っていうようなのがありますからね」
私「その歌どういう意味なんだろ?」
ハ「今さっきの のりもさんの状況ですよ。
曼殊沙華って真っ赤で道端ではっとするほどの色でみんなが気付くでしょ。
『いちしろ』っていうのは目立つって意味で、
わたしの妻をみんなが知ってるよっていうことでしょ」
私「はは・・・いっし花に人麻呂が、やられてるわけかぁ・・・」
ハ「きれいな花には毒がある!♪ きみぃに むねキュン」
いっぽんのまんじゆしやげ見ししあはせに(山口誓子)