昭和58年頃のこと。夜にYの家へゆくと、FMラジオから流れるピアノ曲を聴いて、大きな百科事典を開いていた。
私「おい、Y・・何調べてんの?」
Y「おぅのりも・・・この曲のこと・・・」
私「何?」
Y「あ・・・お前はクラッシック音痴だもんな・・・分からないか・・・。
これさぁ。演奏が最もむつかしいってものの一つだっていう『ラ・カンパネラ』っていう曲なんだよな」
私「うん・・・なんでそんなにむつかしいの?」
Y「ほら聴いてみろよ。
テンポとかピアノの鍵盤をたたいて出てる音が半端じゃないほど多くて速いだろ?
こんなのよっぽど訓練しないとできないだろうが。才能も必要だろうしな」
私「うん・・・そうなんだろうなぁ・・・で?」
Y「で・・・って・・・まぁいいか。
それでな、この曲ってどういう経緯で出来たのかを調べてるんだよ」
私「なにか分かったのかよ?」
Y「うん・・・カンパネラって鐘っていう意味なんだよな。
それで、この曲はピアノで高音を使って鐘の音色をあらわしたんだってさ」
私「かね?」
Y「ああ。カランカランって鳴る、時を報せる鐘だよ」
私「わ カラン・・・」
Y「・・・(ばか くだらねぇ)・・・・」
十指乱舞す千金の夜のピアノ(林翔)