♬ 春よ来い 早く来い
歩きはじめたミイちゃんが 赤い鼻緒の じょじょはいて
おんもへ出たいと 待っている ♪
(『春よ来い』作詞:相馬御風 作曲:弘田龍太郎)
昭和59年頃、ある大学の講師控室に、国文学専攻のF先生が戻ってきた。
F「うぅぅ~~~寒い寒いぃ~~」
私「先生、後期試験の監督ご苦労様です。終わりましたか?」
F「ええ・・・これが最後ですけどね、白いものがちらついてきましたよ。
まさに清原深養父の
冬ながら 空より花の散りくるは 雲のあなたは 春やあるらん
ってとこですね」
私「きよはらのふかやぶ?」
F「あれ?知りませんか? 小倉百人一首にも
『夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいずくに月宿るらむ』
っていう歌があるでしょ。
あの作者で、ちょっと有名な平安貴族ですよ」
私「そうなんですか・・・」
F「この冬の歌なんかも、余韻のあるもので、雪が降るのを花にたとえて、
早く春がこないかなぁっていう感情がよく出てるでしょ」
私「なるほど・・童謡でいえば『春よ来い』っていうところですよね」
F「うぅぅゥゥンンン・・・ミイちゃんじゃぁ可愛すぎるでしょ。
赤い鼻緒もわたしたちじゃ似合わないし・・・」
私「・・・・・・・」
磨ぎなほす鏡も清し雪の花(芭蕉)