昭和55年ごろの昼下がり。研究室で刑事法専門のOと雑談をしていた。
O「ところでさ、今日21日が古代ローマの建国された日なんだぜ」
私「なんだよ、急に?」
O「いやぁ、もうすぐ天皇誕生日だろ。西欧とくにローマの歴史も神話でできてんだから、それと重なってさ」
私「へえぇ~~よく知ってんなぁ」
O「ああ、学部のときの西洋法制史だったか何かで、聞いたおぼえがあるんだよ。現陛下の誕生日から8日前にローマが建国されたってんだ」
私「うん?」
O「いやぁ、教授がそんなこと言ってたのが頭にあるんだよな。それでな、都市国家ローマを創ったのは、ロームスっていう王様なんだよな。この王は双子でさ、弟レムスと一緒に建国したっていわれてんだ」
私「ふんふん・・・それで?」
O「この双子はさ、あの木馬で有名なトロイの国の王の末裔であるレア・シルウィアっていう女性と、軍神マールスとの間に生まれた子供で、大きくなるまで多くの受難を受けて、やがてローマ王になるって話しなんだよな」
私「まさに、ヨーロッパ神話だなぁ」
O「だろ。途中で川に流されたり、狼に育てられたり、羊飼いに拾われて育てられたりするんだよな。まさに、西洋三種の神器だって思わないか?」
私「なんで?」
O「いいかぁ、日本の三種の神器『鏡』『刀』『勾玉』って、神武帝における、それぞれがそれぞれのシーンで必要な物だったじゃないか。それは、ローマ建国神話も同じで、川・狼・羊っていうのも、それに対応するって気がするなぁ。
日本とローマの物に対する意識のちがいだけだと思うんだよ。
だけど、残念なのはさ、ビーナス神がどこにも出てこないんだよなぁ・・・」
私「・・・・・・」
行く春や女神は老いず二千年(佐藤春夫)