昭和56年ごろ、大学での学生仲間たちとの話し。
A「なぁ、この頃『なめ猫』がはやってるだろ?」
B「『なめ猫』っていろんな猫が暴走族の恰好をして、『なめんなよ』とか言ってるやつか?」
A「そうだよ。うちの家でも、高校生の妹なんかが、かわいい~~とか言って、なにやらポスターなんかを集めてるんだよ」
C「たしかに、一大ブームだもんなぁ。だけど、それがどうしたんだよ?」
A「うん、あれで影響を受けちまって、妹がネコを飼いたいって
言いだしたんだよなぁ・・・」
B「え?お前たしか、ネコきらいだよな?」
A「あぁ・・・ネコは苦手でさ・・・
ネコが居るとくしゃみがとまらないんだよなぁ・・・
犬はいいんだけどさぁ・・・。
で、どう思う?
何とか、ネコを飼うことを阻止する方法はないかなぁ?」
B「無理だね」
C「おれもそう思う」
A「なんで?」
B「考えてみな。お前の妹が、ちいさい子猫を連れて帰るとするだろ?
まずお母さんは『かわいいかわいい』って言って世話を始めるぜ、たぶん。
一家の主婦がそうなったら、もう、おしまい。
お父さんやお前が何を反対しようが、絶対ダメだからな。
あれは、女性の小さな生き物に対する本能だろうなぁ・・・」
C「お母さんも反対してないんだろ?」
A「ああ・・・ダメかぁ・・・」
B・C「なめんなよ!!! なぁんてね」
A「・・・・・・」
しげしげと子猫にながめられにける(日野草城)