昭和60年、われわれには画期的なできごとであった。
20万円前後であったワードプロセッサーが、携帯型の液晶画面付きで6万円弱で売り出されたのである。
パーソナルワープロと呼ばれ、電気会社や事務用機会社がつぎつぎと製品を販売しはじめた。
研究室での話し。
B「おい、何のパンフレット見てるんだ?」
C「あ、ワープロか。買うのか?」
A「ああ、6万円を切ったろ?今日、日本橋でパンフレットをかき集めてきたんだ。これくらいの金額なら、おれのバイト代でも買えるからさ」
B「いいなぁ、俺にも見せてくれよ。機種えらびの協力するからさ」
A「ああ、みんなで見ようぜ」
みんなでパンフレットを見ながらわいわい言っていた。と、
C「うん?あのさ、この16ドット印刷って、どういうこと?」
A「ああ、表示の細かさだよ。つまりさ、字の表示って点であらわすんだ。だから、その点が多ければ多いほど正確に表示できて字がはっきり、くっきりするんだよ」
C「え?」
A「あのな、四角のマス目を考えろよ。縦16マス、横16マスの箱があるとするだろぅ。それを黒く塗りつぶして、字を表示するのさ。マスが多ければ多いほど細かい部分まで表現できるから、字の表示が精確になるんだよ」
C「うん・・・・」
A「お前、良くわかってないだろう。あのな、例えばこんな風にマス目を書くだろ・・・それでな・・・」
しばらくして、
C「あ、そうかぁ、なるほど・・・」
B「おい、C。まさに『どっと、疲れた』だろう?」
C「いいやぁ。その説明は、『わー・・・プロ』だねぇ」
A・B「・・・・・・・」
かしこさに合戦なしに飛ぶ蛍(許六)