友人と大学で
A「寒い寒い・・・」
B「今日は雨水だからもうちょっとだよ」
A「ええ、何のこと?」
B「二十四節気の分類で立春から啓蟄・春分の間にある分岐点だよ」
A「なんか意味あんの?」
B「季節的には冬なんだけどさ春がもうすぐってことさ。空から降るものが雪から雨に変わって、雪が解け始める時期なんだってよ。農作業をここから準備し始める合図でもあるのさ」
A「そんなの、気分だけじゃないかぁ。天気予報みてみろよ。きたぐにじゃ大雪だぜ」
B「冬来たりなば春遠からじ」
A「なんだよそれ」
B「イギリスのロマン派の詩人シェリーの詩さ」
A「それはわかってるよ。訳がおかしいんだよ」
B「え、なんで?」
A「いいかぁ、原文はIf Winter comes, can Spring be far behind?だぜ」
B「うん・・・」
A「疑問文じゃないか。ある英文学者は『冬が来るなら、春が遥かにありえようか?(いやありはしない)』って西風に向かって言ってるんだってきわめて人間的な語りの訳になってんだよ」
B「だから?」
A「春遠からじなんて、そんな高圧的な言い方、おかしくないか?」
B「あのな、シェリーの詩は明治時代から多くの作家が訳してるんだよ。その時代背景からいっても、漢文調で訳されるのは当然だろ?」
A「訳も全部含めて、気に容らねぇ!寒い!」
B「なんだよ、おまえも、気分だけで言ってんのかぁ・・・もう・・・」
雨水より啓蟄までのあたたかさ(後藤夜半)