昭和49年1月のわが大学の学年末は混乱していた。
大学が来年度入学生からの学費値上げを決めたことから、学生自治会が反対し、大学封鎖の状況となったからである。
この時期は下火になってきたとはいえ、学生運動の残り火が燃えており、これからはじまる学年末試験、大学入試をひかえて大きな問題をかかえることになった。
在学生であるわれわれは、学年末試験が平常どおり行われるのか、あるいは、レポートでの試験となるのか、やきもきしながら、その行方を見守っていた。
A「おい、学年末試験、どうなるかなぁ?」
B「ああ、レポートだといいなぁ」
A「なんで?」
B「おれ、去年、単位が取れない科目があったんだよな。それを加えると、試験を受けなきゃいけない科目が去年の不合格科目を足して、すごい数になるんだ」
A「うん」
B「だから、レポートなら、何とか全部合格できるだろ?」
C「だけど、それだと、『優』をとることができる科目は減るだろぅ?」
B「なんで?」
A「だって、民法のT教授がいってたよ。『実際の試験で解答するから、試験なのであって、レポートなんて本の丸写しで試験なんてことは言わない。そんなのは、読むのもいやだし、そうなったら、成績なんてみんな『可』か、よくて『良』しかつけない!』ってさ」
B「それでもいいよ。なんとか、履修した科目の合格がほしいもの」
A「うん、そういう学生もいるよな」
C「ああ、反対に一発勝負の通常試験の方がいいって学生もいるもんなぁ」
B「なんで?」
A「そりゃ、勝負が早いし、うまくいけば『優』の成績がとれるじゃないか。科目の勉強に自信のあるやつは、それの方がいいんだろうさ」
B「うん・・・・・・・・」
冬花火誰かいくさのまなざしす(齋藤玄)