8畳の間に正月用の段通絨毯が敷いてある。
大きな火鉢には、やかんから湯気が噴き出していた。
黒塗りのお膳が正面に1つ、並行に2つづつ並べられていて、真ん中に大皿に鯛がでんと据えられている。
おやじが正面の床の間を背にして、お膳のところに座り、「おめでとう」と声をかける。
いっせいにみんなが「おめでとうございます」と言って、お祝いのお雑煮を食べ始める。
朝5時の小さいころのわたしの、正月風景である。
なんで朝5時なのかと、子どもごころにも、不満であった。
おやじいわく、
「正月のお祝いは、おひさまが出る前に済ませるんだ。これが、むかしからの習慣。神さまにお参りをして、神様といっしょにお雑煮でお祝いするものなんだから、陽の出た後に、お祝いをするなんていう不心得者はバチがあたるぞ!」
といって叱られた。
正月というのは、歳神さまを迎えて、その年の豊作を祈る「神まつり」に由来する行事だそうである。まさに日本の農業信仰と合致しているのであろう。
まあ、朝のきりっとした空気のなかで、お雑煮を食べるのも悪くはないなぁと思えるようになるのは、高校生以降であろうか。
当時は雑煮のあとの、あべかわ餅(わが家では『きなこもち』といっていた)とお年玉だけが楽しみであった。
大学生になると、この二つともなくなったなぁ・・・・・・。
元旦の大安日や初暦(皿井旭川)