昭和60年頃、ハチヤ君たちと大学の坂道を下って、地下食堂へ。その途中。
ハ「あ。あそこにヒヤシンスが咲いてますよ。のりもさん」
私「え?あぁ・・・あれヒヤシンスかぁ。小学校の水栽培以来だなぁ・・・。だけど、ヒヤシンスって12月くらいに咲く水色の花じゃなかった?」
ハ「あれは、小学生の植物観察のために、10月くらいから水栽培で教室に置いて育てるから、12月に咲くんじゃないですかぁ・・・」
私「はは・・・そうなの・・・」
ハ「ヒヤシンスって春の題材になることが多くてですね、
たとえば、白秋が
『ヒヤシンス薄紫に咲きにけりはじめて心顫(ふる)ひそめし日』
って歌ってるんですよ。
白秋らしくて春の恋ごころにぴったりするって思いません?」
私「え・・・・?」
そのあと食堂のテーブルで、ハチヤ君が
ハ「あのね、のりもさん『こころふる』ってこう書くんですよ。
でね、『こころ』 と 『ふるい初(そ)め』に分けるんですよ。
この『顫(ふる)』っていうのは、小刻みに震えうごくことっていう意味でしょ。
ヒヤシンスのような女性に会ったのか、あるいは、春のそんな時期になのか、
こうしたときに主人公が
トゥックトゥックトゥクってちいさく心をふるわす恋心・・・
初恋かなぁ・・・・いいなぁ・・・
ね、そう思いません?」
私「・・・・・・ハハハ・・・・・」
春来ぬと風憂かりけりヒヤシンス (水原秋櫻子)