昭和60年ころ、ある大学の研究室で国文学者のU先生と雑談していたとき、
遠くで雷が鳴った。U先生がにこっと笑って、
U「 『春雷の大轟のただ一度』 」
私「え?」
U「知らない?星野立子さんの俳句。僕ね、好きなんですよこの句。
春の雷をぴったりと言い当ててるでしょ」
私「そうなんですか?」
U「ええ。春雷っていうのは
だいたい3月20日前後の春分以降に起こる雷のことを言うんですね。
春の雷っていうのは、
自然現象として冬のおわりから、春の始まりを音で告げるというか、
なんというか、
ファンファーレみたいなものだと、僕は思ってるんですよね」
私「ははは・・・ファンファーレですか・・・」
U「そう。だからたまに霰が一緒にまざって降ってくるんですよね。
これって天からのお祝いの花吹雪ならぬ氷ふぶきでしょ」
・・・ははは・・・・
だけど氷吹雪は、お祝いにはちょっと手荒いなぁ・・・・
吹く風の さそふにほひをしるべにて 行方さだめぬ花の頃かな
(後嵯峨院)