「『弱き者、なんじの名はおんななり』だなぁ」
「いやぁ、『犯罪の陰におんなあり』じゃないか?」
「まさに、恋は盲目だよなぁ」
昭和49年10月末、大手地方銀行Sの女性銀行員O嬢が逮捕された。
顧客の定期預金などを不正に解約して、合計8億9千万円を数年かけて詐取していた。愛人にすべて貢いでいたのである。
世間に与えた衝撃はすごいものであった。
ひとつは、金額があまりに大きいこと。
銀行からの盗難や横領は数十年前の3億円強盗以来であり、その3倍もの金額が横領されたことである。
さらには、銀行という金銭管理のきびしい中で、そうした大金が発覚もせずに盗まれたということ。
最後に、横領窃盗の主犯が女性の社員であったことである。
これらのことは、社会の銀行に対するイメージを根本からゆるがしたのである。
「いやぁ~。女性が思い込んで、一度計画的に何らかの行為をすると、ち密で発見されにくいんだなぁ・・・ある意味すごいや」
というのが、われわれ悪友仲間の大方の意見であった。
このとき、サークル同期の女子学生いわく
「こういう風に、一途になったときの女って強いし、こわいのよ!!おとこにはわからないでしょ。その点で、おとこって子供だもんね。だけど、この横領をそそのかした男だけは許せないわね。切り刻んでミンチにしても余りあるわ・・・」だと。
参りました・・こわっ・・・・
男より女の度胸靴白し(西村和子)