昭和56年7月末、チャールズ英皇太子とダイアナ嬢との結婚式が行われた。
きわめて、きらびやかで、豪華絢爛たる儀式であった。
日本でも、連日、テレビニュースなどでおおきな話題となっていたのである。
式が終わったころの、同期Nとの会話。
N「おいのりもぉ、お前んとこのうちじゃチャールズ英皇太子の結婚式で家族がわいわいさわいで、うるさくないか?」
私「え?うちは、おふくろと俺だけだから、そんなことないぜ」
N「そうかぁ、うちなんて、近所に姉がいて、妹がいて、おふくろだろ。寄るとさわると、ダイアナ妃がきれいだっただとか、あのドレスがとか、瞳の色が、とかいってさわいで、結婚式が終わってんのに、やかましくてしかたねえよ」
私「ははは・・・女の人にしたら、あこがれなのかもなぁ・・・いわば現代版シンデレラだもんなぁ」
N「ちがうだろぅ。シンデレラは物語で、そっちが現実の王室模様を模倣(まね)してるんだろうが」
私「お前ね、こんなとこまで、順番や論理なんか振り回してどおすんの?まったくぅ。おねえさんや妹さんに嫌がられるだろぅ?」
N「そういうがな、休みの日に朝から晩までテレビの前で週刊誌を広げて、女三人が『わいわいわいわい』騒いでんだぜ。おれの身にもなってみろよ」
私「なんで?そんなに嫌なのか?」
N「だって、まともに御飯を食べさせてもらえないじゃないかぁ」
私「・・・・(なんだよ、それ)・・・・・」
ゆめもまた大き蛍火うつつかな(高屋窓秋)