「『この味がいいね』と君が言ったから、七月六日はサラダ記念日」(俵万智)
昭和62年ころ、ある学校で、高校でも教えておられる国文学者のF先生と話すことがあった。
F「のりもくん。俵万智さんの歌、知ってる?あなたはどう思う?」
私「え、サラダ記念日ですか?いますごい評判ですよね。どおって、・・・何か和歌らしくないなぁって・・・」
F「うん、現代詩だからね。しかし、悪くないというより、いいでしょう?何か、わかやいでいて、サラダの青さと新鮮さとほんのりとした恋の気分がマッチしてる。わたしは自分ではこの歌を現代感覚詩、または、現代感性詞と名付けてるんですよ」
私「なるほど。だけど、古歌と対比するとどうなるんでしょうね」
F「ええ、わたしは、サラダ記念日を見たときに、額田王の
『あかねさす紫草野(むらさきの)標野(しめの)行き 野守は見ずや君が袖振る』
っていう万葉歌を思い出したんですよ」
私「ああ、大海人皇子が、額田王に手なんか振ってるので、見張りがみたらどうすんのよっていうあれですか」
F「はは、そんなあからさまに言っちゃあ実も蓋もないでしょう。しかし、若い女の人の思いっていうのはいつの時代でも同じようなもので、表現法だけが時代を反映するんでしょうね」
私「そうなんですかぁ・・・」
だけどおれは、サラダよりステーキのほうがいいなぁ・・・(心のこえ)
焼肉にうすみどりなるパセリかな(飯田蛇笏)