高校時代、親友のTが、夏のはじめにわたしに、
「おれ、公務員になる」と言いだした。
「えぇ、お前、大学へいくんじゃなかったのか?まえはそう言ってたじゃないか」
「ああ、大学へはいくよ。国立か公立大学の二部へいく」
「・・・・・」
Tは学校の成績順位が、つねに、学年で5番内である。
超一流の大学あるいは難関学部は別として、普通の国公立大学ならおそらく現役で合格するであろう。
何かしら、ここでも、わたしは少し取り残されたような気がしたのを覚えている。
彼の国家公務員試験の一次試験は9月であり、その合否発表は11月中旬であった。その日、わたしは、教室でなぜかドキドキしながら、結果を聞くと。
彼はひとこと、
「うん、通った。ここから、二次試験がもんだいなんだよなぁ・・・・」
そうなのかぁ。複雑な仕組みの試験だなぁ・・・・・・
しかし、冷静な、あっけらかんとしたTの返答にもびっくりするわたしであった。
Tの詰襟の顔が大人びていた・・・・・。
制服に林檎を磨き飽かぬかな(林桂)