4年生の夏は、われわれにとってはあわただしい日々であった。
就職活動の「真っ最中」である。
夏休みながら、ゼミの同期生と本部食堂で話すことがあった。
みんなが、就職情報の交換をしているのである。
わたしとサークル仲間は、やや後ろめたい気持ちで聞いていた。
というのも、われわれは、司法試験浪人か、その他の資格試験受験あるいは大学院への進学を考えていたからである。
「おい、就職課にいってきたか?」
「ああ、もうめぼしい企業は締め切りが終わってるよ」
「それに、今年度は募集人員が少ないしなぁ・・・・。くそぅ、もう1年早く生まれていれば!」
そうである。オイルショックの影響ですさまじい狂乱物価となり、物などが売れず、企業が新卒採用を手控えたのだ。
昨年のゼミ先輩などは、この時期には90パーセント就職先がきまっていた。
「それで、会社説明会は、いったのか?」
「ああ、説明会だけで、今週は全部つぶれるよ」
「しかし、大きな会場に数百人が集まって、採用されるのが、10名前後だもんなぁ。気が遠くなるよ」
「だけど、高校時代の友達はもう就職が決まったっていってたぜ」
「それは、よっぽど強い縁故があるか、国公立大学の学生さ」
強烈なパンチあるひとことで、夏の日が暮れていった。
蒸れる面接あまた学生折りたたまれ(穴井太)