11月も末になると、朝晩は寒くなる。
冬支度も本格的に始まるころ、わが家の食卓に粕汁があらわれる。
母親いわく、
わたしが、苦手なメニューである。
ご存じだろうか?粕汁というのは、割合に関西中心の汁もので、だいこん、ニンジン、こんにゃく、ごぼうなどを小さく切って刻み、鮭か豚肉といっしょに煮込んで、酒粕で汁仕立てにするのである。
白い色の酒のかおりがぷーんとする食べ物で、酒粕のもろみが多少残っている。
これと一緒に、おおきなイワシが焼かれて出てくるのである。
わたしは、小さいころから、このメニューが出ると、叱られても、逃げ出すことに決めていた。
姉や兄などは、
「おいしい、おいしい」と言って、おわんで2杯も3杯もの粕汁を食べていた。
からだが温まっていいらしい。
わたしは、この酒粕のにおいと、イワシ独特のなまぐささが受け付けられないでいた。
いつも、つけものとごはんをいっぱい食べて、食卓を逃げ出したものである。
大学生になって、母親が同じセリフを言うと、
「いやだ!!鮭だけ焼いて。あとはいらない。ごはんだけでいい」
と抵抗していた。
本格的な冬に入る前の、わがやの風物詩である。
母親はいつも
「あんたはもぅ、子ども口なんだから・・・」とぶつぶつ言っていたが・・・・
乾鮭を切りては粕につゝみけり(水原秋桜子)