
昭和60年ごろ、ある大学の講師控室で国文学者のF先生とお茶を飲みながら話していた。
F「押し詰まってきましたねぇ・・・・」
私「師走ですものねぇ・・・
そろそろ学年末試験の準備もしなきゃいけないし、あわただしいですねぇ」
F「そうだ。のりも君、茶月っていうことばを知ってますか?」
私「さげつ・・・ですか?」
F「『茶の花や利休が目にはよしの山』(山口素堂)
っていう句があるんですよね」
私「・・・・ぇ・・ぇ?・・・・」
F「12月ってブッダが悟りを開いた月だっていわれててね、
そこから12月の異名のひとつに茶月っていう言い方があるんです」
私「はぁ・・・」
F「それでね、茶道って仏教の影響が強くあって、12月が新年になるんですよ。
なぜかっていうとね、11月から冬釜がはじまって、
そこから本格的なお茶を点てる会合なんかが始まるんですよね」
私「ぁあ・・・そういうことですか・・・」
F「茶の花っていうのは冬の季語でね。
白い花なんですけど、今の時期に満開になるんですよ。
僕はね、この素堂の句は、冬の吉野山での景色を詠んでるんだけど、
お茶と始祖利休とよし(良・吉?)が掛かった、
冬の素朴だけどおだやかな情景がよみこまれてるんじゃないかなぁって
思うんですよねぇ・・・
まさに・・・十二月ですよねぇ・・・・
そういう意味で、われわれも、
しばらく、ゆっくりこのお茶を楽しみましょうよ・・・」
私「・・・(なるほど)・・・・」
走らずに ちょっと一服 茶のかほり(のりもよしあき)