
♫ Lucy Locket lost her pocket. Kitty Fisher found it.
Not a penny was there in it. Only ribbon round it. ・・・♪
(Lucy Locket,イギリス民謡)
( ルーシー・ロケットはポケットをなくした。
キティ・フィッシャーがそれを見つけた。
中には一銭も入っていなくて、ただリボンが巻かれているだけだった。)
ある大学の研究室に戻ると、
英文学者のK先生がはなうたを歌いながら本をめくっていた・・・
K「♪・・フフフンフフフフフ リバン ランドゥイッ・・・」
私「あれ?先生それ ♪ アルプスいちまんじゃく こやりのうぅえで~・・・
じゃないんですか?」
K「え? ああ・・・にっぽんじゃぁ・・・そちらの方ですよね・・・
だけどこれイギリス民謡でしてね・・
原曲としては17世紀の
クロムウェル時代から歌われてたって言うんですよ・・・」
私「へぇぇ~~~そうなんですか・・・
それでまたなんでそんなことを思い出したんですか?」
K「はは・・・いえね・・今日が漱石の忌日なんですよね・・
漱石ってロンドンに留学してるでしょ・・
それでこの曲も滞在時には聴いてるんじゃないか
なんてふと思いましてねぇ・・・
だいたい漱石って
イギリス文学の研究にいってるわけでしょ・・・
そうすると・・
こうしたイギリスの伝統的な歌なんかにも
興味を持つかとおもったんですよ・・・」
私「ああ・・・なるほど」
K「今は子供うたとして歌われるんですけどね・・・
ここの歌詞がおもしろいんですよ・・・
えっと・・・ほら・・・
pocketって出て来るでしょ・・・
これ今のズボンのポケットじゃなくて、
昔は小さな袋・・いまでいうポシェットのようなものを
pocketっていってたんですよ・・
腰につけてぶらさげるようなものでね・・・
それを落としてだれかが拾うっていうことで・・
リズミカルな曲とあわさって
体を動かす遊び歌になってるんですよね・・・」
私「へぇぇ~~~・・・」
K「漱石ってロンドンへ行って本を読んで・・
研究ばっかりしてて、ほとんど下宿から出なかったっていうでしょ・・・
それが原因で胃潰瘍になったんだ
っていう説もあるくらいなんですよ・・
♪そぉせきいちまんかぁい ぽぉけっとをさがしたけぇど
でてきたもをのわ~ リボンだけ~・・・なんてね」
私「ははは・・・かわいそう・・・」
K「『うつむいて 膝にだきつく 寒さかな』(夏目漱石)
なんてこと・・実感したんじゃないですかね・・・
ロンドンで・・・」
私「・・なる・ほ・・ド・ロン・どん・・」
K「・・・・・・・・・・」
いそがしく時計の動く師走哉(子規)