うおおおおぉぉぉぉーーーーー
座布団が舞う、あちらこちらから、飛んでくる。
すさまじい狂喜乱舞である・・・
アナウンサーの声がかき消される。
「やりました、たかのはな、優勝!!優勝!!」という声がテレビから流れている。
大阪府立体育会館昭和50年3月23日の日曜日。
角界のプリンスといわれて、大人気であり、大関にまで昇進しながらも、関取としてはそれほど大きな体ではないため、場所での優勝ができないでいた。
大阪ではこの時期の相撲は、春を呼ぶにぎやかな場所といわれ、わくわくとするし、何かしら期待がある。
貴乃花はその甘いマスクとストイックともいえる相撲で、女性のファンが多かった。
いわば、現代版『牛若丸』といえようか。
このとき、貴乃花13勝2敗、北の湖13勝2敗と、同率で決定戦へともつれ込んだのである。
北の湖は貴乃花より若く、いわば向かうところ敵なしという大横綱であった。
しかし、残念ながら女性などからの人気がない・・・
いうところの、『くろうと受け』するお相撲さんである。
私が見るところ、京の五条大橋での、『弁慶と牛若丸』の対決となった。
え・・・・勝っても負けてもこの勝負、北の湖はなんやかんや、言われるんちゃう?
かわいそう・・・・・悪役やん・・・・と。
しかし、演劇などのつくりものでもないかぎり、こんな勧善懲悪の幕切れとなることはめったにないであろう・・・・。