電光掲示板の上の時計は5時を指している。
スポットライトを浴びた男が、マウンド上に立ち
「・・・・わが巨人軍は永久に不滅です。・・・・・」と。
昭和49年10月14日の月曜日である。
昭和33年にジャイアンツに入団して37年目の秋のことである。
われわれが、ちいさな子どものころからのヒーローであり、よく有名人がお風呂屋の下駄箱や着替えのロッカー番号に長嶋のつけた背番号3番を選び、その番号の場所を取るためにケンカになったことなどがよくエピソードとして述べられている。
われわれも、さまざまな場所で、番号選択をするときには、3番を選ぶことが多かったものである。
とにかく、かっこいいのである。ここというときには、必ず、ヒットあるいはホームランを打つ。
その典型が、阪神のエース、村山実から放った天覧試合での「さよならホームラン」であり、わたしは、よく映画ニュースでこれが流されていたのを覚えている。
少年漫画でも「ちかいの魔球」「巨人の星」「侍ジャイアンツ」など、王・長嶋というのは、欠くべからざる選手であった。
特に、長嶋選手というのは「憧れの的」なのである。
そのひとが、まさに引退する姿を今みている。
これ以後、彼の選手姿をみることができないのかという感慨で埋め尽くされたテレビ画像であった。
秋風にもののふの塔ゆらぎそむ(原裕)