昭和49年7月、北の湖が21歳2ヶ月の最年少記録で第55代横綱に昇進した。
北の湖、二代目若乃花、大錦の三人は、昭和28年生まれで、この5年ほど前から「花のニッパチトリオ」と呼ばれて、将来、大相撲を背負って立つ逸材として注目され、いちはやく頂点に立ったのが北の湖である。
この時代、トリオということばを使ってのグループ分けがはやった時代でもあった。たとえば、『花の中三トリオ』(桜田淳子、山口百恵、森昌子)、お笑いの『てんぷくトリオ』など・・・
あるとき、悪友とはなしていて、
「なあ、花のニッパチのまずトップに北の湖が立ったなぁ」
「うん、だけどトリオに順序がつくと、トリオというまとまりはこわれるんだよなぁ」
「そうなのか?」
「ああ、トリオの語源は、西洋音楽の三重奏だよな。ということは、三つの部分がどれもつよいというのではなくて、調和してハーモニーを構成するわけさ」
「うん」
「とすれば、北の湖だけ強くなるということは、三角形がくずれるだろう」
なるほど、調和っていうのはバランスの美しさか・・・・
連峰の高嶺々々に夏の雲(高浜虚子)