昭和56年ごろの秋昼休み。しゃれ者で刑事法専攻のOと大学地下食堂へ向かって、坂道を下っていた。
私「なぁO・・・ところで前から聞こうと思ってたんだけど、法学科目のなかでも、お前はなんで刑事法を選んだの?」
O「うん?・・・今日の日付」
私「え?」
O「♪ わたしがぁ~ あなたにぃ~ほれたのわ~
ちょぉどぉじゅうぅくのぉ はるでぇした~
(『十九の春』田端義男 作詞・作曲:沖縄俗謡歌) ってね」
私「それ・・・今日の10月9日をひっかけてるわけ?」
O「ははは・・・そう・・・
それでな、学部1年生のとき、法学概論を勉強するだろ?
そのとき、おれの担当教授が刑法学専門の先生でさ、
事例形式の問題を解くんだよな。
たとえば、甲をピストルで殺害しようとして、
引き金を引いたが弾が出なかったとか、
甲に当たらずに無関係の乙に当たったとか・・・
それぞれ殺人罪の未遂・既遂とか、罪の重さのちがいを考えるんだよな・・・
これが面白くてさ・・・」
私「なにかパズルみたいだなぁ・・・」
O「うん・・・そんな一面がないとはいえないな。
だけどさ、ひとがある行為をして処罰されるときは、
客観的で、だれでもが同じ結果が与えられなきゃならないっていう、
この平等性にたまらなく痺れたんだよなぁ・・・
♪ いまさら民事に変えるぅなら~ もとの十九にぃ してお~くれ~ 」
私「・・・・・・」
くる秋は風ばかりでもなかりけり(立花北枝)