♪こたえ~ いっぱつぅ 〇〇〇ミニ♪
テレビから、いきおいのある明るい歌声が聞こえてくる。
電気式卓上計算機のCMである。
電卓と称される計算機が昭和46年に小型化されて発売され、その4年後の昭和50年11月には1台4500円となるなど、大衆化してゆく。
それまで、計算といえば、主にソロバン、筆算であった。
計算機といったら、せいぜい、中学校で覚えた計算尺くらいなものである。
ソロバンができるということは、今以上に特殊技能で、ソロバンの段位など持っている者に対しては、ある意味で、神扱いをしていた。
それが、電卓さえあればソロバン技術がなくても、簡単に加減乗除の結果を手にできることになったのである。
やがて、電卓の普及は急速で、一家に一台は電卓があり、学生なども5人にひとりぐらいの者がさらに小さい電池式の電卓を持ち歩くという生活となった。
われわれゼミ仲間でコンパをして、
「さあ、終わりにしようぜ。みんなで、3万2千5百円だから、11人で・・・」
「まてまて、おれ、計算機持ってるから計算する」
と電卓をカバンから取り出す。
「もう、こんなもの暗算でいいじゃないか」
「いいや、1円単位まで割り勘でいこうぜ。ええっと・・・」
お前、計算機つかいたいだけだろぅ・・・・
割り算の合はぬ勘定秋の暮れ(森下康子:『璦』所収(2013年11月))