norimoyoshiakiの日記

昭和40年の後半からの学生生活と、その後のことを日記にしています。ご意見をお待ちしています。

げんこつ

 ゴツン、ゴツンと音がして、目から火が出た。

「こら、お前ら!飯は後だよ、先に酒を飲め。飯なんか先に食ったら酔わねえだろうが!」

鬼の形相でげんこを振り上げる4年のFさん。

どうやら、ごはんは最後の最後というのが『酒飲みの慣習』であるらしい。

みんなが吹き出したり、苦笑いしていた。

わたしとHは仕方がないから、お膳の前に戻り、おかずを食べ始める。

 

 合宿最終日の宴会のこと。

顧問の先生たちの、長いお説教がおわって、乾杯後すぐのことである。

おなかがぐうぅぅと鳴っているわたしとHは顔を見合わせうなずくと、すぐさま宴会場の端に置かれた、おひつに向かって猛ダッシュ

ちゃわんにごはんをヨソおうとした瞬間のできごとであった。

 

 近くの3年生が、

「ばかだなぁ、お前ら。もうちょっと待てよ。あのFさんは、あと5分したらべろんべろんになるから、わけが分からなくなるし、そうしたら、他の4年が止めてもくれるのに」

 

 しかし、飯を盛りに行って殴られるのは、訳が分からなかった。

まったくもう、ここは軍隊かよ・・・・酒飲みはかなわないなぁとHと話していた。

まあ、宴会の席で先にごはんを食べるのは、酒飲みにすれば雰囲気を壊すというのだろうが・・・・。

 

 われわれが4年になったら、このサークルでは、『酒飲みの慣習』は廃止、と心に決めた。

 

       めしが出て三日月の出る宴つゞく(穴井太)