norimoyoshiakiの日記

昭和40年の後半からの学生生活と、その後のことを日記にしています。ご意見をお待ちしています。

線引き小切手

 昭和59年の11月、大阪市内の都市銀行の支店窓口に居た。

 

女性行員「お客様、この小切手では、お支払いできません」

私「え?支払場所はここになってるし、今さっきこの小切手をもらってきたんですよ?」

 

行員「あの・・ですね・・・、この小切手は、端に二本線がいれてありますでしょ。

これでは、銀行を通してしか、お支払いできないんですよ」

 

私「・・・・・・・・」

 

行員「あのぉ・・・どこかの銀行の口座をお持ちですか?

それなら、そこへ持ってゆかれるか、

どうしてもとおっしゃるなら、

 この小切手を渡された名義人様から 二本線を消すために、

裏判を押していただいて、もう一度お越しいただくか、・・・

                  されてはいかがでしょうか?」

 

私「・・・はい・・・・」

 

私は、顔から火が出そうであった。すごすごと、引き返したものである。

学生時代から法学を専攻している者にとって、痛恨の失敗であった。

 

 原則、小切手は一覧払い、

つまり支払名義人が、口座を持つ銀行に持ってゆけば、現金になる

                ということしか、頭になかったのである。

 

 しかし、小切手法という法律によれば、

支払いを確実にするために、

二本線を引いて、

 誰に支払ったか、確実に支払われたか が分かるように、

銀行間での決済をするという制度として使われる、

   『線引き小切手』

      というものがある。

 

 これを、すっかり忘れていたのである。

忘れていたというより、頭の隅にさえなかった。

 

 いいわけをすれば、

『線引き制度』というのは、大学講義でも最後の方でちょっとだけ習うに過ぎないため 

 記憶になかったこと、

 

 もっぱら企業間取引で利用される小切手に使われるため、商売でもしていなかぎり

 目にするのがほとんどないこと、

 

 講師料の支払で小切手が渡されたのだから、

 すぐお金になるだろうと思ってしまったこと

(この小切手はこの時期、ある専門学校で1と月分の報酬として受取ったのである)

 

 やっと、『線引き小切手』のことを思い出して、銀行の外で待ち合わせをしていた友人O中君に話すと、

 

O中「ぷっ!!!ばかだねぇ・・・あんた法学専攻での大学院の学生でしょ・・・線引き小切手って知らなかったの・・・・」と、さんざんバカにされた。

 

私「お前だって、すぐには分からなかったじゃないかぁ」

 

O中「僕は国際関係専攻。知らなくても仕方ないの」

私「そんなことないだろぅ・・・あのな・・・」

 

たわいない口げんかが続いていました。

しかし、恥ずかしかったなぁ・・・・・

 

        秋は夕を男は泣ぬ物なればこそ(椎本才麿)