女性行員「お客様、この小切手では、お支払いできません」
私「え?支払場所はここになってるし、今さっきこの小切手をもらってきたんですよ?」
行員「あの・・ですね・・・、この小切手は、端に二本線がいれてありますでしょ。
これでは、銀行を通してしか、お支払いできないんですよ」
私「・・・・・・・・」
行員「あのぉ・・・どこかの銀行の口座をお持ちですか?
それなら、そこへ持ってゆかれるか、
どうしてもとおっしゃるなら、
この小切手を渡された名義人様から 二本線を消すために、
裏判を押していただいて、もう一度お越しいただくか、・・・
されてはいかがでしょうか?」
私「・・・はい・・・・」
私は、顔から火が出そうであった。すごすごと、引き返したものである。
学生時代から法学を専攻している者にとって、痛恨の失敗であった。
原則、小切手は一覧払い、
つまり支払名義人が、口座を持つ銀行に持ってゆけば、現金になる
ということしか、頭になかったのである。
しかし、小切手法という法律によれば、
支払いを確実にするために、
二本線を引いて、
誰に支払ったか、確実に支払われたか が分かるように、
銀行間での決済をするという制度として使われる、
『線引き小切手』
というものがある。
これを、すっかり忘れていたのである。
忘れていたというより、頭の隅にさえなかった。
いいわけをすれば、
『線引き制度』というのは、大学講義でも最後の方でちょっとだけ習うに過ぎないため
記憶になかったこと、
もっぱら企業間取引で利用される小切手に使われるため、商売でもしていなかぎり
目にするのがほとんどないこと、
講師料の支払で小切手が渡されたのだから、
すぐお金になるだろうと思ってしまったこと
(この小切手はこの時期、ある専門学校で1と月分の報酬として受取ったのである)
やっと、『線引き小切手』のことを思い出して、銀行の外で待ち合わせをしていた友人O中君に話すと、
O中「ぷっ!!!ばかだねぇ・・・あんた法学専攻での大学院の学生でしょ・・・線引き小切手って知らなかったの・・・・」と、さんざんバカにされた。
私「お前だって、すぐには分からなかったじゃないかぁ」
O中「僕は国際関係専攻。知らなくても仕方ないの」
私「そんなことないだろぅ・・・あのな・・・」
たわいない口げんかが続いていました。
しかし、恥ずかしかったなぁ・・・・・
秋は夕を男は泣ぬ物なればこそ(椎本才麿)