Uは国際私法を専攻している。
Uが国際私法を専攻したのは、とにかく英語が好きで、英語を習得するために国際私法を選んだのかとさえ思われた。
国際私法という学問は、とにかく英語ができなければ進まない学問である。
あるとき、Uと雑談をしていた。
私「なあ、U。1日どれくらい英語文献を読んでる?」
U「え?まあ、日がな、いちにちだなぁ」
私「それこそ、俺にしたら『え?』じゃないか。まる一日かよ?」
U「ああ。英語文献を読むために入ったようなもんだな」
私「それ、飽きないのか?」
U「飽きないよ。好きだもん。ただ、英語って言っても法学英語だろ?その点ではちょっとなぁ・・・」
私「うん?どういうこと?」
U「例えば、イギリスの文献をよむだろぅ?そうするとさ、Bargrave Dean判事は云々って出てくるんで、イギリス判例も読まなきゃならないようになって、それを探したり、法理論がどうのこうのって解釈論をしなきゃならないのが嫌いでさぁ」
私「そりゃあ、法学なんだから、その解釈がメインだろ?」
U「そうなんだろうけど、その解釈論っていうのがだめなんだ。ああでもない、こうでもないって、こねくり回すじゃないか。あれがなぁ・・・」
私「そりゃ、法学は理論武装して、実務で役立つようにする学問だもんなぁ。俺の指導教授なんかでも、『理論と実践』の融合が大事って言ってるぜ」
U「うぅぅンンン・・・・」
数か月後、大学でUが坂道で声を掛けてきた。
Uの隣に、大学へ日本語留学をした女性がいる。
U「のりも、紹介するよ。アメリカから来た〇〇〇嬢」と。
そのあと、小さい声でわたしに、
U「のりも、おれの英語の『理論と実践』」
私「・・・・・・・・」
洒落てゐるとはででむしの殻のこと(後藤夜半)
(ででむしはカタツムリのことで、むかしは殻を取ると、なめくじが実態であると考えられていたそうな・・・・・天のこえ)