英語の授業が終わった秋のある日。
「さあ、昼めし、昼めし・・・。どこへいく?本部食堂にする?」
みんなでがやがや、本をカバンに詰め込んで話をしていた。
すると、おもむろに、前の扉から学生服の人間が入ってきて。
「おーーす!!!練習をはじめます。よろしく」とあいさつをして。
♪ べんせい~~~ しゅくしゅくぅぅ~~ よる かわをををを~
わたるぅぅぅ~~~ ・・・・・・♪
と謡いだした。
みんなが、あ、しまった。
今日は『吟詩部』が昼練習する日かぁ、と思っている。
弁当をそこで開いて食べていた学生は、あわてて蓋をして部屋を出てゆく。
そうである。
『吟詩部』が1か月に2・3回昼の休みに、語学教室で練習することになっている日がある。
語学教室であるため、詩吟の練習にはもってこいなのであろう。
われわれは、彼らの邪魔をしないように、急いで部屋を出た。
1年生の初めのころは、急に詩吟が目の前で演じられるので、面食らう者が多かったのを覚えている。
高校から、詩吟部のある者は慣れているのか、平気で、
ああぁ、ちょっと聞いていっていいだろうか?
などと
詩を吟じる学生に言って、その場で聞き入っていた。
若い、張りのある声を背中に聞きながら、
ああ、お腹すいたぁと、
みんなで食堂へ向かうわれわれであった。
若いころは、詩吟という教養文化より食欲が勝ります。
つと揚る詩吟や月の瓜小屋に(西山白雲)