『氷まんじゅう』というのをご存じであろうか。
わたしは、子どものころ、大阪市内に住んでいた。
そこは町工場が多くならんでいるところで、わが家も商売の関係上その地区で暮らしていた。
8月真夏の酷暑の日、昼の2時ごろになると、おやじが、わたしを呼んで、30メートルほど先の駄菓子屋に行ってかき氷を15個買って来いという。
昼過ぎのおやつにするのである。
おやじが働いている事務所では5人ほどの従業員がいて、その人たちにもふるまうためであった。
そのとき、おやじは、
「よしあき、おまえの分も買ってきていいから、いそいで行ってこい」といわれ、
金だらいと150円をもって、店まで駆けて行った。
店に着くと、おばちゃんに、
「氷まんじゅうを15個ください。蜜は『いちご』『黒蜜』『みぞれ』の3つを、5つづつ」
と言って、150円をわたす。
おばちゃんは、冷蔵庫から氷片を取り出し、手掻きの『かき氷器』をつかって、かき氷の山を下のガラスの器に盛り上げてゆく。
しゃ しゃ しゃ しゃ
しゃ しゃ しゃ しゃ・・・・しゃああぁぁ・・しゃしゃ・・・
ひとつのこおりが出来上がると、かき氷を手のひらでおさえて、まんじゅうをつくるのである。
そのうえからあか、くろ、しろのシロップをかける。
こおりを固めては、また、かき氷を上にのせて、固めて、シロップをかける・・・・
見ていてたのしいものである。
その『大きな氷のまんじゅうになったもの』を、金だらいのなかに入れてゆく。
「持てる?」
「うん」というと、上に、ふきんを掛けてもらって、いそいで家へかえるのである。
少し、つめたいが、夏の暑さでここちよい。
いまは、もう、氷まんじゅうなんてものはないでしょうねぇ、不衛生か・・・。
だけど、おいしかったぁ・・・・・
かき氷匙音立てて甘つたれ(大木あまり)