われわれが、大学に入ったころの人気女性歌手は、天地真理、あべ静江、小柳ルミ子であった。それぞれ、特徴があり、清純派歌手として売り出していて人気沸騰であった。
悪友たちと好みの歌手のはなしをしていて、
「いずれがあやめかかきつばた」だよなぁ。
「うん。だけど、なんで『あやめ』と『かきつばた』なんだ?
『ばら』と『ゆり』じゃいけないのか?」
「だって、『ばら』と『ゆり』じゃあ咲く時期がちがうだろう。それに、ばらとゆりじゃあ、似てないからまちがわないし、まよわないじゃないか」
「まようさ。はなやかな花がほしいときなら、ばらかゆりかどちらにしようかとおもうじゃないか!」
「そういう迷い方じゃなくて、日本古来の美的な花のどれかを選ぶときに、むかしから、その例としてあげられているのが、『あやめ』と『かきつばた』だろぅ。
いえば、日本の情緒じゃないか」
「うぅぅん・・・・」