5月の終わりごろになると、大学では健康診断が実施される。わたしたちにすれば、これがやっかいでる。大学学生全員の大人数の健康診断であるから、実施日および時間が決められている。
月曜日の1限目などに当たれば、大変である。眠い、遠い、荷物が重い、遅刻すれば再検査となるなど、不都合が重なる。とにかく、指定日時に遅れないように、必死で総合体育館に駆けつける。ただ、若い元気な時期の検診であるから、問題などは出ないし、再検査などは、ほとんどなかった。
検査日当日、検査問診用紙を手に、長い長い列にならび、受付で検尿用の紙コップを受けとり、トイレにゆくと、ここでも順番待ち。やっと、身長、体重、胸囲等々を計り終え、最後に残るのが、レントゲン撮影。これらを済ませて悪友たちを待っていると、
Hが出てきて、いわく、
「メガネを、かけろってさ」
「なんで?」
「上から3つめまでは、当たったんだよ。4つめから、あてずっぽうで言ったらだめだった」
あたりまえだ、とみんなで大合唱。
最後にFが青い顔をして出てきた。
「どうだった」と聞くと。
「再検査」と、ぽつんという。
みんなが、ええ~、なんで?
「昨日の晩、飲みすぎた」
ばか、検査前日に大酒飲むなよ。
大酒に起きてものうき袷かな(宝井其角)