昭和48年に池田理代子原作の「ベルサイユのばら」という漫画が一大ブームとなり、女性ファンの間で、静かではあるが、大きなうねりを生み出すさわぎとなった。
そのブームにさらに火をつけたのが、宝塚歌劇団による全国各地での公演であった。
ところが、大学の同期の女子学生にきいてみても、それほど騒いでいる様子がない。
大学生であるために、原作漫画を読むという習慣がないのである。
「え、あれは少女マンガでしょ。それは、少なくとも中学校で卒業よ」
という具合である。
男子学生のように、まんが週刊誌をかかえて大学へ来るというような、彼女たちにいわせれば、「みっともない」ことはしない。せいぜい、マニアたちが、家でちょっとした楽しみに「ベルばら」を読んでいるにすぎないのである。
一方、宝塚歌劇団のベルばら公演は、この後、大盛況となり、一大ブームを巻き起こした。
初演での話題は、このベルばらを演出したのが、二枚目俳優として名を馳せた、
長谷川一夫であった。
それまで、宝塚歌劇団はテレビなどにおされて、いわばピンチに立っていたのである。それが、昭和49年の初公演から火がつき、男性ファンを巻き込んで、女性ファンの大きな宝塚ブームを生み出した。
まんがが、演劇や映画の題材となった嚆矢ではなかったろうか。
はなやかな時代である。
薔薇の園 引き返さねば 出口なし (津田清子)