♬ 秋の夕日に照山もみじ 濃いも薄いも数ある中に
松をいろどる楓や蔦は 山の麓の裾模様・・・♪
(『紅葉』作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一)
ちょっと寒くなったある日、後輩のハチヤ君と大学坂道を下っていた。
ハ「♪ あきのゆうひぃ~に てるぅやま フンフフフン~・・・」
私「お・・・もみじかい?またどうしたの?」
ハ「いえぇ・・・季節柄、ぴったりでしょ。
それにこの前、秋の正倉院展を観にいったんですけどね・・・
奈良公園の紅葉がきれいでしたよぉ・・・」
私「へぇぇぇ~~~・・・そうなの」
ハ「『奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋はかなしき』ですね。
きれいなんだけど、ものがなしくて、情緒があるでしょ?」
ハ「お、よく知ってますねぇ・・・・」
私「この前、同期のOが言ってたからね」
ハ「はは・・・Oさんなら、何かしゃれを込めて言ってたでしょ」
私「はは・・・まぁね・・・ところで、この歌ってどう解釈するんだろ?」
ハ「うぅンンン・・・ぼくはね、解釈って大きく二つあるとおもうんですよね。
この鳴く鹿が作者本人のことをいってるって考えるか、
作者自身は鳴いている鹿を見ているのかで
何を悲しんでるかが変わってくると思うんですよねぇ」
私「うん・・・・?」
ハ「この鹿って牡鹿でしょ。
その鹿が秋の紅葉の時期に恋しい雌鹿を思って鳴いてるわけですよ。
そのとき、
作者自身が鹿なら自分の恋のゆくえを自身の秋の体験のなかで追い求めてるわけでね。
反対に作者が鹿の鳴く声を聴いているとしたら、
客観的で、ああ・・・鹿も失恋するほどのもの淋しい秋であることよなぁ
なんてどこか他人ごとでしょ?」
私「なるほど・・・・」
ハ「僕は・・自分が鹿になる方が・・いいなぁ・・・」
私「・・・(Oと・・おんなじこと・・言ってる)・・・・」
濃く淡くひるがへりつつ蔦紅葉 (阿波野青畝)