昭和62年頃のこと。ある大学の喫茶食堂で、経済学者のY先生と商学の J 先生との話しを近くで聞いていた。
F「いやぁ・・・J さん、えらいことだねぇ・・・
東京銀座の1坪が1億円越えだってさ。
なんでもはがき一枚分の広さの土地が65万円だって・・・びっくりだね」
J「そうですねぇ・・・あちこちで『地上げ』なんていう
ひどいことも起ってますからねぇ・・・」
F「ま、土地ころがしだよねぇ・・・
日本はだいたい土地の価値は下がらないっていう神話があるからねぇ・・・
ただ、経済原理からいうと、土地も物なんだから、
需要と供給の関係は働くんだけどねぇ・・・」
J「そうでしょうねぇ・・・いつまで続くか・・・
だけど、Y先生のおうちも、昔は地主さんだったんだから、
今でも、大きな土地を持っておられるでしょ。
今売れば、大儲けじゃないんですか?」
F「だめだめ。俺の家は近畿でも田舎だから、
たぬきやきつねは出るけれど、ネオンや飲み屋街はないからね。
だれも欲しがらないよ。
地上げなんてのは、都会の一等地か、
高級住宅街になるようなところじゃないとね」
J「ははは・・・きつねとたぬきですか・・・
まさに馬鹿しあいですね」
F「そうそう・・・お、のりも君・・・
あんた家を買うならよく考えなよ。
結局、高い値段で買って、ローンで苦しむことになるんだから」
私「・・・・・・」
貧乏は口伝のごとし熟柿吸ふ(たむら ちせい)