大学でゼミの友人同士。
A「1月の花ってなんだろう?」
B「いろいろあるよ、水仙、梅、シクラメン、山茶花なんかだろぅ」
A「そのなかで、1月に一番ふさわしいのってなにかなぁ?」
B「ふさわしいかどうかは、分からないけど、俺は水仙が好きだなぁ」
A「なんで?」
B「前に、冬の北陸に行ったことがあるんだ。そのとき、道路の山ぎわにいっぱいの水仙が咲いててさ。可憐できれいだったぜ」
A「ふうぅぅん。水仙って何か和歌に残っていそうだけど、知ってる?」
B「よくは知らないけど、水仙って大陸から渡ってきた花なんだってさ。だから平安時代にはこの花の和名がなかったようで、江戸時代くらいに水仙がうたにとりあげられるようになったんだって。だから、水仙についてのうたっていうのは、これ以後のものしかないんだってさ。たとえば、
『ふりかくす雪うちはらひ杣人(そまびと)の名もかぐはしき花を見るかな』
(千種有功)
っていう『うた』があるよ」
A「え、どこにも水仙ってことばがでてこないじゃないか?」
B「このうたはさ、ちょっと仕掛けがあって、杣人っていうのは『やまびと』とも読むんだよ」
A「うん、うん」
B「でな、水仙っていうのは『山に住む仙人』って意味があって、杣人(やまびと)が花の水仙をあらわすことになるそうだよ」
A「ややっこしい。なんでそんなことをするの?」
B「うん・・・。水仙っていう字が漢語なんだよ。その漢語を和歌に入れることは忌み嫌われるんだよなぁ」
A「ああぁ・・・いわば国粋主義かぁ・・・」