norimoyoshiakiの日記

昭和40年の後半からの学生生活と、その後のことを日記にしています。ご意見をお待ちしています。

福本豊選手の1億円保険

 昭和48年ごろのことである。大学にて。

A「なあ、福本選手の足に1億円の保険がかかってるだろ」

B「ああ、そうだったよな。確か去年のシーズンオフに阪急球団が福本選手の足に、1億円の保険を掛けたってニュースがあったなぁ」

 

A「あれ、だれが得するの?」

B「え、誰も得なんかしないさ。まぁ、福本選手の足は1億円の価値がありますよ、阪急球団はそれを認めてますよ、みなさん球場へ来てくださいって言うPR効果とイメージアップにはなるだろうなぁ」

 

A「なにも得もしないのに、保険掛けるのか?」

B「おまえさぁ。保険の基礎知識って数学で習ったろ。『大数の法則』ってやつでさ。言やぁ、危険分散が保険なんだよ。だから、自動車保険を考えてみろよ」

 

A「うん、で?」

B「もう・・・。たとえば、20代のドライバーが100万人いるとするだろ。そのとき、たとえば、1年でこのドライバーが3人おのおの100万円の事故を起こすとしたら、100万人全員で事故金の総額300万円を分担する掛金、ひとり3円を基金として積み立てておくのさ。そうすれば、だれが事故を起こしてもその積立金で穴埋めできるじゃないか。これが保険の基本だよ。まあ、実際にはこんな単純なものじゃないけどさ。」

 

A「だけど、事故を起こさなかったひとは、掛金が損じゃないか」

B「自分が事故を起こしたときはその保険金が手に入るから、損害の穴埋めができるっていう安心があるじゃないか。それも一種の利益で、いちがいに損とはいえないだろぅ?」

 

B「うん、そうかぁ。ということは、福本の場合も、盗塁のために足に保険を掛けている人が、ほかに99万9,999人いるわけだ」

 

A「もおぉ、そんなわけないだろ!福本のは原則とはちがう特別な保険!!」

 

B「え、なんで・・・・?」

 

     学問のさびしさに堪え炭をつぐ(山口誓子