norimoyoshiakiの日記

昭和40年の後半からの学生生活と、その後のことを日記にしています。ご意見をお待ちしています。

講義ノート

 12月。

大学前の文具屋あたりで、学生らしき者が、大判のちらしを配っている。

1枚手に取ると、『大学講義ノート販売』と頭書きがあって、あちこちで、学生が歩きながら話している。

 

「おい、憲法講義ノートが出てるぞ」

「要らないだろ、憲法は、仏のM教授だぜ。どんなに悪くても、可はとれるだろぅ?それよりも、撃墜王の○○教授の講義ノートはないのかよ?」

 

「ええっと、ああ、近日発売だってよ。そう書いてある」

「おっとそれ、俺、買っとかなきゃ」

 

 講義ノートというのは、勤勉な学生が1年間履修して書き上げたノートを、大学前の文具屋が買取って、コピー製本して、1部500円から600円で販売するのである。

 

 講義出席をさぼった学生にとっては、いわば『あんちょこ』の役割を果たす。

しかし、これを手に入れたからといって、単位取得が保障されるわけではない。

学生にすれば、藁をもつかむ思いでこれを使うこともあるのだが。

 

 そのとき、話しをしている学生の横を。

今まさに撃墜王とよばれた教授が、この学生を追い越して学舎へむかっていた。

その顔は、何とも言えない苦笑いに・・・。

 

 それに気づいたもう一方の友人が

  「おい、声がおおきいよぉ・・・・・・」と、ひじで突っついていた。

 

       歳晩の人らに遠くいくさあり(岸風三楼)