大学のたまり場にて。
B「なぁ、A。しわすだろぅ?なにかお前の得意の枕草子で、しわすの記事はないのかよ?」
A「別に得意じゃないさ。ま、調べてみるか」
しばらくして、Aが図書館から戻ってくる。
A「あったあった。いいかぁ」
『師走の十余日のほどに、雪いみじう降りたるを、女官どもなどして、縁にいと多く置くを、「同じくは、庭にまことの山をつくらせ侍らむ」とて、侍召して、仰せ事にて言えば、集まりて作る。主殿(とのもり)寮の官人の御きよめに参りたるなども皆寄りて、いと高う作りなす』
A「こういうことだよ」
B「なんだそれ、よくわからん。説明しろよ」
A「簡単にいやぁ、12月10日に雪がふって、女官が縁側のところに雪を集めて山にしたんだけど、どうせ山にするなら、大きいのをつくろうぜってんで、男どもをあつめて庭に大きな山を作らせたってさ」
B「なんだよ、つまんねぇ。雪山つくっておわりって、なんにも楽しくないだろう?」
A「お前さぁ。枕草子って清少納言の宮廷日常記録だぜ。日常なんて、そんな劇的なことが毎日あるわけないじゃないか。おまえだって、朝起きて、毎日学校へ来て、生活してるだろ?なにか特別おもしろいことがあるかよ?」
B「そんなことはないさ。俺は毎日、みんなとしゃべりながら、あんなこと、こんなこと、っていいながら、いろんなことをして、生活してるのは楽しいぜ」
A「そりゃ、時代がちがって、することが多少ちがうだけで、清少納言の世界も一緒だろ。12月に積もるような雪がふって、景色が真っ白に変わるなかで、きゃっきゃ言いながら雪山を作ってる。これも日常での、遊びとしての楽しみなんだろぅさ」
B「ううぅぅぅンンン・・・?・・だけどなぁ やっぱり俺は、平安時代に生まれないでよかったよ・・・・」
A「・・・・・・・」
雪景にいふことなくて朝の刻(飯田蛇笏)