昭和49年11月、ジャイアンツのV9監督川上哲治氏が引退した。
NHKのテレビインタビューで労をねぎらわれている。
「川上さんごくろうさまでした。今後は何をなさる予定ですか?」
「いやぁ、ちょっと疲れました。ゆっくり休んで、ゴルフ三昧で過ごそうと考えてます」と。
わたしには、ゴルフというのは、あまり身近なスポーツではなかった。
秋から冬にかけては、毎年日本選手権という最後のトーナメント試合がおこなわれ、ゴルフというスポーツでのいわば歳時記となっている。
わたしが大学生のころは、尾崎将司、青木功、杉原輝雄といった名前がテレビアナウンスで聞かれたものであった。
しかし、われわれ学生にすれば、ゴルフは大人の社交場所あるいは貴族スポーツという感覚が強く、テレビでその中継があったとしてもあまり関心をひかなかったのである。
いわばわたしにとっては、マイナーでお金のかかる、自分には関係のないスポーツである。
そのため、日曜日のトーナメント中継は、
「あ、またやってら。そういや、もうすぐ、冬だもんなぁ。これでシーズンオフかぁ」
という感覚でしかなかった。
昭和時代の、プロゴルフトーナメントが、華やかに開催されているときのことであった。
一葉落つ山を拓きてゴルフ場(長崎小夜子)