5時に研究会が終わった。
いつものように、悪友たちと駅へ向かう。
A「うわぁ、暗い、もう陽がおちてるよ。ついこの前までは、この時間なら十分明るかったのに!」
B「うん、秋の陽のつるべ落しだなぁ」
C「ちがうちがう、『秋の日は釣瓶(つるべ)落し』だよ。ことわざだから、正確にいこうぜ」
B「そうか、だけど『ことわざ』なら、いつからのものだよ?出典は?」
C「それが、わかんねえんだよ。少なくとも、滑車と縄で井戸の水を汲むっていう仕掛けができてからだろうなぁ」
A「なんで?」
C「だって、釣瓶落しっていうのは、一方の水桶が空になっていて、縄から手を離すと、一気に井戸に落ちるさまをいうんだろぅ?なら、そうした、仕掛けで水を汲む時代以降じゃないと、このたとえは出てこないじゃないか」
A「だけどさぁ、この前お寺にお墓参りに行ったとき、お墓を洗う水を汲みにいったのさ。小さいころは滑車仕掛けだった井戸に、電動水汲ポンプがついてたぜ。もう、井戸の水汲みに滑車仕掛けはなくなるんじゃないか?」
C「ああ、将来はこの『ことわざ』はなくなってしまうかもな。残っても情緒的意味がわかんないだろうよ。井戸もなくなるしなぁ」
文学的表現がひとつ消えそうです・・・・・
星ひとつ釣瓶落しの中にかな(稲辺美津)