norimoyoshiakiの日記

昭和40年の後半からの学生生活と、その後のことを日記にしています。ご意見をお待ちしています。

クウォーツ時計

 昭和50年にクウォーツ時計が発売された。

クウォーツというのは、ぜんまいばねで時を刻むのではなく、水晶を振動させて時を刻むという仕組みである。

そのため、動力として電池が必要になるのではあるが、腕時計などでは、ぜんまい式に比べて精確で、非常に軽量であるため、腕にはめているという感覚がなく、評判になったのである。

 

 われわれの時代、腕時計といえば「リューズのみえない自動巻き」というフレーズで有名な、やけに重量感のあるS社の自動巻き腕時計が主流であった。

 

 この時計がいいのは、常にうでに重さを感じるため、腕時計をしているかしていないかがよく分かったこと、電池などの動力を必要としないため安上がりであること、そのため、反対にポケットなどに入れておくといつの間にか時計がとまってしまうことが欠点であった。

 

 休みの日などで2・3日時計を着けないでおいておくと、止まってしまうために、日時をもう一度あわせなければならないという不便にさらされるのである。

 

 わたしは、高校の入学祝いに、初めて親にこの自動巻きの時計を買ってもらい、それ以来大学卒業まで、C社の自動巻き腕時計を使っていた。

しかし、C社のそれは、S社に比べて人気がなく、悪友たちのほとんどは、S社の自動巻き腕時計をしていた。

 

 ある日、悪友のひとりが、S社製の腕時計を持ってきて、

「のりも、見ろよ。クウォーツ時計を買ったんだ。いいだろう」

「まったくお前は、新しい機械物が好きなんだから」

「ははは・・・だけどさ、軽いし精確だし、便利だぜこれ」

「それで、今まで使ってた腕時計はどうするんだよ?」

「使うよ。今までのは普段用で、これは『よそいき』」

「・・・・・」

 

 われわれの頃は、休日などのときに外出する際には、ちょっとおめかしをするための服を「よそいき」(他所行きか?)と特別な言い方をしていた。

さて、時計も「よそいき」と言うのかなぁ・・・・?

 

       秋深き時計きざめり草の家(室生犀星