秋のある日、奈良行きの電車に乗ると、あやめ池遊園地で菊人形展をしている。
そのときは、秋の花は菊という感覚しかなかったが、考えてみると菊は国花であるという話しがある。
気になって、調べてみることにした。
まず、旧暦9月9日は重陽とよばれ、縁起のよい日とされ、この慣習は、やはり、中国から伝来したものである。
そのとき、菊を飾る習慣があり、日本でもこれに倣ったのである。
ただ、新暦の9月ではまだ菊は咲かず、旧暦9月すなわちいまの10月になると菊がきれいに咲くために、これを愛でてお祝いをしたようである。
このときに、菊をめでるのは、中国では、菊の花からしたたる水を飲んで長寿になったという伝説『菊水伝説』が生まれ、これにならって、日本でも長寿をねがう「菊の節句」として宮廷で催しがなされたことが、皇室の象徴としての花に菊が選ばれたそうである。
この話を悪友Hにすると、
「うん、菊は高貴な花だとかいうから、そりゃわかるよ。だけどさ、俺は、小さい菊の花の方がすきだなぁ」
「なんで?」
「だって、『野菊の墓』を読んでもわかるけど、大輪より野に咲く菊花の方が、可憐でいいじゃないか。何か、ぐっとこないか?」
「おまえそれ、小説の方じゃなくて、また百恵ちゃんの映画を想定してないか?」
「ははは・・・・・」
きり崖や日陰の野菊濡れて咲く(正岡子規)