スライド映写機から壁に貼られた紙の上に投影された文字を、ペンですばやく、なぞる。
書き終えて、トムはその違いを確かめながら、書き終えた大きな紙をびりっと破る。
何度も何度も繰り返す・・・・
ルネクレマン監督、アランドロン主演「太陽がいっぱい」のワンシーンである。
ニーノ・ロータ作のテーマ曲とともに、強烈でわすれられない映像のひとつである。
大学で手形の署名を勉強するのであるが、署名というと、このシーンを必ず思い出した。
トムは地中海をヨットで航行中に富裕な家庭の息子フィリップを殺害して、彼の持つ小切手を使って大金を手に入れる。
その小切手のフィリップ署名を真似るために、船内で訓練をするシーンがこれである。
強烈な太陽 まっさおな地中海 しろいヨット あまく流れるテーマ曲
8月のテレビでの洋画劇場でこの映画を見て、9月からの手形法講義のとき、
わたしの頭の中でニーノ・ロータの「太陽がいっぱい」の曲が何度も何度も流れていた。
映画見ぬ歳月久し巴里祭(石川冬扇)