プールへ泳ぎにいったとき、プールそのものに入る前に、アーチ型の水シャワーをあびてゆかなければならない。
これは、通過するとき、わりあいに冷たい水であるため、われわれ仲間が
「うわっつめたい」
といって通ってゆく。
プールへ入って、悪友が
「これもウォーターゲート事件だな」と言ったのである。
これはアメリカの選挙がらみで、ニクソン氏が対立候補の情報をえるために、ウォーターゲート社という会社のビルに盗聴器を仕掛けたことが分かり、政治問題となったのである。
これをきっかけにして、当時のニクソン大統領が弾劾裁判にかけられるかという事態になり、アメリカ史上はじめてといってよい任期中の大統領辞任となった。
日本でも大きなニュースとして注目をあつめていたのである。
「おい、プール入り口のシャワーが『水のゲート』だからウォーターゲートといってるんだろ。だけど、事件じゃなかろうが」と反論すると、
当人は
「いやぁ、事件って『くだんのこと』って書くんだから、『かくあるべきことがら』まさにプールに入る前には必ず水を浴びろって意味では事件じゃないか」
「まったく、へ理屈いいやがって」
プールにて水の大なる恩を享く(山口誓子)