夏合宿帰りの列車のなか。Bが出発駅で買った冷凍みかんを食べ始めた。
A「おっ、おれにもひとつくれよ」
B「いいよ、食べろよ」と手渡す。
A「サンキュー」
B「さて、夏のみかんだから千両だぞ、おい千両」と手を出す。
A「なんだよそれ?」
B「知らないのか?落語であるだろう。商家の若旦那が真夏にみかんが食べたくて病気になり、両親が必死で青物問屋からみかんひとつを見つけ出して、その息子に食べさせる、はなしさ。そのときのみかんの値段が千両なんだよ」
冗談なのだが、ここは冗談で返さなければならない。
Aが困った顔をしているので、
Cが「A、気にするな。ここで、3つぶ残してみかんを食べな。そのあと、トイレに行けよ。それでオチがつくからさ」
B「あ、Cお前この落語のオチを知ってたのかぁ、くそぅ」
というのは、この落語では、若旦那が千両のみかん(10粒)を3粒残して食べた後、のれん分け間近の番頭が、みかん1粒100両の価値があるとの思い違いをして、このみかん3粒を持って姿を消したというオチになっているのである。
あくまでもシャレである。
電車のなかの「『たわけ』ばなし」でした。
冷凍みかん齧り旅路の汽車ぽっぽ(高澤良一)