藍のはなしをもうひとつ。
わがサークルでのこと。
われわれの2年先輩が大学を卒業してすぐさま、司法試験に合格した。前々から優秀なひとであるといわれていたが、さらにその能力向上と勉強に、拍車がかかり、当然の結果となった。
あちこちから賞賛の声があがる。
その賞賛のひとつが、『出藍の誉』である。
悪友たちと話していて、
A「『藍は青より出でて青よりも青し』というわけだろう(『青は愛より出でて藍よりも青し』を間違えている(後起))。だけどこのいわれは、論語にあるとされていて、王様はつねに勉強をしなさいよというのが元の意味らしいじゃないか」
B「なんでも、藍というのは葉っぱで染めるが、これは一度では濃い青色にはならずに、何度も何度も染めて初めて濃い濃密で良い色に染まるということから、勉強も同じだよということらしいよ」
C「だけどさ、日本では、このことわざは、弟子が師匠よりもすぐれた才能をあらわして、りっぱなひとになるという意味でつかわれるんだろ?」
A「ああ、そうだよなぁ」
C「それなら、このわれわれの先輩の場合は、何が師で、その師をどう超えたということになるのかねえ?」
B「へ理屈を言うんなら、わがサークルでは、彼ほどのスピードで試験に合格した者はいない。それをあの若さで合格するというのは、サークルでの諸先輩を含む部員すべて以上の能力をもって栄冠を勝ち取った、という意味で『出藍の誉』になるんだろうさ」
全員「・・・・・・・・・」(沈黙)
乾かして黒く涼しく藍の玉(長谷川櫂)