話しがつづく。
「外国ではどうなんだろう?」
「あまり、日本の演芸のような上演途中での『はやし』の文化はないと思うなぁ。たとえば、クラッシックの音楽会では、観客が少しでも音を立てたら、追い出されるじゃないか」
「ああ、そうだよなぁ」
「まちがっても『はやし』なんてしようものなら、犯罪者扱いされそうだぜ。西洋音楽や演劇は演ずる側と聞く側がきっちりと分けられていて、演技の最後まで見聞きして、感動したなら、最後にアプローズというか拍手大喝采、絶賛するという文化だろうよ。途中で遮るなんていうのは、もっての外さ」
「だけど、天地真理なんかの演技も同じ歌だぜ、なんで、日本だけは途中で『はやす』ことがゆるされるんだろう?」
「思うんだけど、日本の音楽は大衆音楽なんだよ。貴族や王族に奉る楽曲じゃないから、静かに聞くというよりは、みんなでわいわいと楽しむというのが、基本だろう?そのとき、演者に応援の意味も込めて、『はやす』のは、演者と聴衆が一体になっていることのあらわれじゃないのか?」
「そうか、それで、大学の講義中に質問とか言って、口をはさむと、教授が烈火のごとく怒るのかぁ」
「・・・・・・・・・・・」
喉元をするりと氷菓とセレナーデ(有馬英子)