アルバイトが休みの日、ひさしぶりに落語を聞いていた。
演目は『藪入り』である。奉公に出ている息子が、藪入りで帰ってくることで小さな波紋が起こるというはなしである。
藪入りというのは、商家などに働く従業員がその店から実家に帰るのが、1年に2度だけで、それが夏の旧暦7月での『藪入り』と冬の『お正月』なのである。
われわれが、子供の頃でも、こうした藪入りの制度というのは、ほとんど廃れていて、わずかに8月のお盆やすみのときに、年寄りたちが、多くの商店が休みにはいるので、『藪入り』ということばを使っているにすぎなかった。
藪入りの語源というのは、いろいろあるらしいのだが、よくいわれているのは、「やぶの深い田舎へかえるから」ということだそうである。
こうした、習慣が消えかかっていることがあるのに、ふと思い出したのは、商法という法律であった。
3年のはじめに、われわれは、商人がやとっている者のことを商業使用人というと習う。
そのなかで、地位によって、支配人、番頭、手代という名でよばれている者に分かれるのである(今は、六法には、支配人という用語しかないのだが・・・)。
はじめて、この『ことば』を聞いたとき、
「え、落語?」と耳と目を疑った。
さすがに、法律には『藪入り』という用語はつかわれていなかったが、
「商法って、実際の取引社会を反映するんでしょう?こんな用語で大丈夫?」
と思ったものである。
藪入りの小僧丁稚ら今いずこ(石塚友二)