わたしが小さいころまでは、夏には、家の大掃除があった。わたしはこれが好きで、よく手出しをしようとすると、
オヤジが
「おまえは、じゃまになるから、あっちへいってろ」といって、母親が整理清掃している台所の方へ追いやられた。
こっそり見ていると、8畳や6畳の間に敷いてある畳を、小さな庭や門前に全部持ち出して、山形に2枚で人の字に立てかけて、ひとりが蒲団たたきでぱんぱんとたたくのである。
姉や兄などは、手伝わされていたため汗だくで畳をたたいていた。
畳がなくなった部屋には消毒薬のにおいがして、おやじが畳部屋の板敷の板をはがして、あらたに床下にしろい消毒薬を撒いていた。
ふだん見れない床下がなにやらふしぎな空間であったことが記憶にある。
そのあと、あらたに新聞紙を敷いて、夕方前に畳をもどして、タンスなども、もとの位置にもどして完了するのである。
終わった後、みんなで風呂に入ると、そうめんが食卓にならび、
母親が
「ああ。さっぱりした!」と言っていたものである。
何の変哲もない、あつい夏のある日であった。
親子してへな~畳大掃除(河野静雲)