わたしが子供の頃は、夏の思い出といえば、物売りであった。
家の近くに売りにあらわれる物売りとして、『ふうりん』『わらびもち』があった。
物売り以外は、『かき氷』『スイカ』『たらい行水』『あさがお』『氷やさんのリヤカーでの氷配達』『ワタナベのジュースのもと』である。
夏のある日、悪友たちと話していて、みんな同世代であるから話しは通じる。
「なぁおい、子供の頃は、ふうりんやわらびもちを売りに来たのに、このごろは見ないよなぁ」
「そりゃそうさ。あれって、それほどもうかるものじゃないもの。それに、食べ物は衛生上の、もんだいがあるからなぁ」
「かき氷は?」
「今は、フラッペとかいってさ、喫茶店なんかで食べる、かき氷の方が、人気じゃないか?」
「氷やさんの配達ってよかったよなぁ。みんなが集まって、あの氷をのこぎりで切っているときに、子供たちが下で手を出して、きりくずの氷を手にためて食べたりしてさ。氷やさんも、怒ったりしなかったしなぁ」
「あの、ワタナベのジュースのもとは?」
「うぅぅん。さいきん、見ないんだよ。あの粉ジュース、探してんだけど。あれ、妙においしかったんだよなぁ・・・・・・」
みんな、こどもの顔になっていた。
雲しかと止まりてあり盛夏かな(上田俊二)